ユース・ワークキャンプ in フィリピン - その3 -
フィリピンに来て最初の朝、FMラジオの大音響でお目覚め。びっくりしたけど気持ちのいい空だわ。これから2週間この地に滞在し、いろんな活動をしていくわけなんだけど、子どもたちにとって大きなハードルが、まず原始的な生活。以前のワークキャンプによって建てられたこの施設、というか大きな小屋には、電気もガスも水道もないです。飲み水はミネラルウォーターだけど、食器洗いや洗濯は塩味の井戸水。人力で掘ったというこの井戸は海辺ゆえ塩味らしい(試してないけど)。この小屋の屋根に降った雨は裏手の巨大な樽4個に溜められて、そこから一人バケツ二杯まで汲み出してシャワー室に持って行き、体を洗うというシステム。トイレだけが近代的で水洗式。といっても仕組みは、朝発電機を回してポンプを動かし、井戸水を高所のタンクに持ち上げるといった単純なもの。そして夕方には空になったりして、バケツ抱えてトイレに走る姿もよく見かけました。
食器洗いはみんなでなかよく井戸端で。でも中盤から熾烈な大じゃんけん大会の敗者が大量の洗い物をすることに・・・
炊事は薪で、照明はランプ。電気はないけど12Vのバッテリーにつながれた巨大なオーディオが常に音楽を鳴らしてるのが不思議。フィリピンでは灯りよりも音楽の方が大事みたい。
これはフィリピンスタッフのアール。ナイスガイ。
洗濯が面倒だからと着替えを沢山持ってきたタカも、井戸端会議しながら洗濯板でパンツ洗ったり、水節約のため男二人でシャワー室に入ったり(ユーミ、覗くなよぉ)。最年少ハルキはこのシャワーシステムをわかってなくて、4日目にして初めて体を洗ったんだって。出てきた直後のハルキの至福の表情といったら・・・
洗濯お疲れさまー。
二階からハイチーズ。
環境変わると排便がスムーズにいかないのはみんな共通の悩み。お互い本日の成果を披露しあったり、ひねり出す方法をアドバイスしたり。ひときわ長く停滞していたマリのがついに出たときには、まるで盆と正月が一度に来たような嬉しさ。こういうめでたいことはみんなで分かち合おう!そしてまた、30人に対して便器が2個しかないから、朝の混雑時は男子の用足しには広大な大地が推奨されまして、でもこいつが実に快適快適。開放感あるし、待たせて悪いと思わなくてもいいしね。女性にもオススメです!
宿泊したのはこんなところ。
男スタッフはこの横にあるテント・・・(風で飛ぶからロープで留めてる)
部屋の中はこんなふう。夜は真っ暗でたぶん他の人を踏んでしまうと思う。テントのほうが気楽だね(と自分を慰め)。
このように普段の日本での生活とあまりにギャップが激しいので、早く日本に帰りたい、と誰か言い出すかと思っていたけれど、どうやら子どもたち、このナチュラルライフを楽しめているようです(局所的にホームシックとかあったみたいだけど)。
ミネラルウォーターとコップの木。この人は韓国のフリースクールティーチャー、チョンヒョン。
さてもう一つの大きなハードル、それは異国の人とのコミュニケーション。このワークキャンプの参加者は、日本人10名(子ども6、大人4)、韓国人13名(子ども6、大人7)フィリピン人十数名(子ども5、大人入れ替わりで多数)という内訳。さっきも言ったけど、日本の子どもたちは英語がほとんどダメ。かく言う私も半年前までは似たようなレベル。別件で英語スキルが必要になったので、ネイティブの先生に個人レッスンを受け始めてようやくカタコト。中学の時から十年以上勉強してきてこのレベルというのは情けないよねえ。子どもたちも文法テストだとそこそこ出来るんだけど。日本の英語教育についてあれこれ思うのも束の間、容赦なく英語が流れてくるので我々スタッフも必死。わからないからとはいえ、ミーティング中いちいち中断して日本人にだけ訳するのも具合が悪いし、どうせ訳してくれるからと、理解する努力を怠るようになってもよろしくない。そこでみんなで話し合って決めたのが、基本的にそれぞれ努力し、わからなかった人はミーティング終了後、個人的にスタッフに聞きに来る。重要事項についてはスタッフから各人に念押しする、ということ。これでまあ、事務的なことについてはとりあえずクリアかな。
ヨンハンからスケジュールについて説明を聞く日本人チーム。真剣な顔で聞いているが、でもこの時点で意味はほとんどわかっていない・・・
問題はもっと個人的なコミュニケーション。英語も日本語もペラペラな韓国のヨンシル(♀)は、スタッフミーティングの際にこう発言。「韓国の子どもたちが、日本の子どもたちは私たちのことを嫌ってるみたいだ、と言っているよ」と。これはいかん。だけど日本語のできるヨンシルは、日本の子どもたちとよく話し、彼らが英語をほとんど理解できないことがわかっているので、韓国の人たちにその旨伝えてくれているって。ありがたい配慮、痛み入ります。
けれど日本人がそう思われるのは英語が出来ないせいだけではないよね。韓国人参加者で唯一英語がいまいちのテヨン(♂)は見栄晴君みたいな顔で、人懐っこく話しかけてきては、すぐ言葉に詰まってしまうヤツなんだけど、それでも何とか通じさせようと頑張る姿がかわいくて、みんなの人気者。我らが日本人参加者はというと、女性陣はかなり社交的で、ユーミもマリも他国の子どもたちと一緒にいる姿をよく見かけるのよね。ところが男どもはずいぶんとシャイ。日本人同士は成田でのことを思うとこの1,2日の間でかなり親しくなったけれど、異国の人に対してはあまりコミュニケーションをとろうとしてないみたい。まあこの私も若かりし頃の自分を思い出すと、もっとビビリだったからねえ(いやマジで)。それを考えると、こうやって自分の意思で海外にボランティアに来るなんてだけでもすごいものよ。自分の中でいろいろ折り合いをつけるのに時間が必要なんでしょうね。温かく見守ろっか。
こちら女性陣、アヤサ&ユーミ&ヨハネス。
マリ&デュアン。
こちら男性陣、ハルキ&トシ。
タカ&フク。
とはいえ、2週間しかないので、このまま日韓の溝が深いままだとまずい。おそらくフィリピン参加者も少なからずよそよそしさを感じているはずだよね。そんなわけで日本人緊急ミーティングを開催。子どもたちにその旨を伝えると、みな神妙な面持ち。スタッフにできることは何だろうか。といっても我々のこの顔ぶれでは、笑いで盛り上げるしか芸がなんだけどね。
こんな顔ぶれ。レーコさん&トモエ、そしてヨンハン。
エージ&コッタ。
まあしかし、そんな心配はすぐに無用となりまして。これまで、あれどうしたらいい、これは何?とか、そんなん現地人でない俺に訊くなよ、みたいなことばかり質問していたトシが、「こういうことを言いたいんだけど英語で何て言えばいい?」と訊いてくるようになったのだ!!彼は教えてもらった短文を口の中で繰り返しながら、聞きたい相手のところに行って伝え、今度はその返事をつぶやきながらスタッフの所に戻ってきて、どういう意味かを尋ねるってなことをはじめたのでした。
海坊主ヨンハンと共に朝食を食べるハルキ。
テーブルを拭く働き者のトシ。
テレながら女性たちの横を過ぎるトシ、ポーズは忘れない。左からマリ、ヨンジュ、ヨンシル、ウンビー。
またあるフリータイム、テーブルの周りに日本人参加者が集まっているのでふと見ると、何とヨンシルが日本語で英会話のレッスンをしてくれているではないですか。こうやって、いろんな人や環境の助けを借りながら、子どもたちは日々成長していくのでありました。
ヨンシル先生の英会話教室。
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